ファーン諸島

イギリスでもこの国なりの「猛暑」が続き、大小様々なイベントが目白押しの時期です。この時期のこちらの人々は、貴重な日光と気温を少しでも多く楽しもうと、若干の必死感が否めません…どこかでもうすぐ冬になってしまうのではという恐れがあるので、分からないでもないのですが…
そんな中、海鳥のコロニーとして有名なファーン諸島に行ってきました。イングランド北部に位置するファーン諸島は、ケンブリッジから車で5時間ほどです。
ファーン諸島へは、対岸のSeahousesという小さな港町から、いくつかの会社がボートトリップを運営しています。

Enthusiastic ornithologist 及び photographer にお勧めのコースを予約したところ、ヨーロッパ各地から集まった生粋のカメラマンたちに囲まれました…
パフィンとして知られるニシツメドリ、ウミガラス、フルマカモメ、そしてシロカツオドリの編隊が早速飛び交う中、いよいよ島が見えてきました。

パフィンやオオハシウミガラスの営巣場所が近づいてくると俄然カメラマン達のテンションがあがってきます。

岩壁からはとぼけた顔のパフィンが出迎えてくれました。パフィン以外にも、ウミガラス、オオハシウミガラス、ミツユビカモメなどの集団繁殖地となっています。

その後、島の一部に上陸し、自由時間を与えられました。上陸すると、そこではもう文字通り足元でパフィンらを観察することができます。

しばらく観察していると、イカナゴなどの小魚をたくさんくわえたパフィンが海から戻ってきます。島の地面には無数の巣穴があり、その奥にいる雛へ給餌するとまた出てきて採餌トリップに出かけていきます。

せっかくたくさんくわえて帰ってきたのに、警戒しているのか、単純に巣穴を忘れてしまうのか、しばらくそのままの状態でまごまごしているのが何とも微笑ましい感じでした。

どうやってこれだけ多くの魚を一度にくわえられるのかが不思議なところです。レンジャーに聞いてみたところ、「根元から順々にちょっとずつはさむようにしてくわえていく」とのことでした。確かによく見るとなかなか複雑なクチバシの構造をしています。

これらの島はナショナルトラストによって所有・管理されているため、上陸時には大人一人6.4ポンド(1000円弱)が徴収される仕組みになっています(会員は無料)。私たちの船の前後にも、コアなカメラマンから短パンの観光客まで多くの人が上陸していましたので、かなり大きな収入源になっているものと思われます。エコ・ツアーの可能性というものを知らされました。
 

立ち入りできる場所はロープで区切られているのですが、概ねマナーは守られているようでした。レンズの先は出ているかもしれませんが(笑)
他にもヨーロッパヒメウやウミガラス、ミツユビカモメなどの雛も多数見られました。

集団営巣地では驚くほど間近で多くの行動を観察できる反面、島から続々と飛び立っては餌をとって戻ってくるこれらの海鳥を見ていると、あの大海原で何をやっているのか知りたいと思った海鳥研究者の気持ちがとてもよくわかるような気がしました。もちろん今ではアホウドリの衛星追跡から始まった研究が、ジオロケーターを使った小型の鳥の研究にまで発展しているわけです。そんな、一研究分野の開拓・発展につながった海鳥研究者の思いを感じることができたのはいい経験でした。
ファーン諸島ではないのですが、ジオロケーターを使ったパフィンの研究はつい最近も発表されていました。パフィンは近年個体数の増減も話題になっています。あれだけイカナゴに依存していれば、餌資源の動態にかなり影響を受けやすそうだなという印象を受けました。
Harris et al. 2013 Inter-year differences in survival of Atlantic puffins Fratercula arctica are not associated with winter distribution. Marine Biology.
 
島からの帰りには、ハイイロアザラシが億劫そうに見送ってくれました。他にも、キョクアジサシやサンドイッチアジサシなどのアジサシ類も無数見られました。パタパタと少し不器用に飛んでいくパフィンに比べ、アジサシ類の優雅な飛行は青い空に映えてとてもきれいでした。
行き帰り含めて3日間の短い滞在でしたが、ファーン諸島のあるノーサンバーランドは、イギリスのいい田舎の雰囲気を残した素晴らしい地域でした。「極めて稀」と地元の人が言っていた好天に恵まれたことも大きいとは思いますが、またぜひ訪れたいと思える場所でした。
 
近くにあるバンバラ城から見える海岸。天気が悪く人の少ないビーチとして有名だそうですが、好天に恵まれてファーン諸島まで望むことができました。
 バンバラ城の土産はなぜかGolden ploverエールとCurlewエール。

ノーサンバーランドの農地。ケンブリッジのあるイーストアングリアよりもヘッジローが多い。