保全におけるモデル利用

偶然よさげな論文(本?)を手に入れました。
Beissinger et al. (2006) Modeling approaches in avian conservation and the role of field biologists. Ornithological Monographs No.59.
American Ornithologists' Unionという学会に入っていて、そこから(年1で?)送られてくるレビューですが。
紹介しておきながら最大の問題は、これ、なかなか手に入らないかも。電子ジャーナルはもちろんのこと、OPACWebcatでもないような気が。。。Aukという雑誌とセットなので、図書館行けばあるのかな?もちろん欲しい方は僕のところに来てもらえればコピーはできますが。
このレビューは、野外生物学者、特に野外鳥類学者がモデル(数理およびシミュレーションモデル)に拒絶反応を示すことに対する嘆きが原動力のようです(シンポがあったらしい)。
レビューは、
「米生態学会大会での発表は21%がモデルに関するものであるのに、鳥学会ではたった4%である」
とか、
「シンポの参加者に対して
"What is the first thing that you think of when I say the words 'model or ecological model'?"
と聞いた答えは、
"I go right to the Discussion and hope that they know what they are doing"
"people who haven't been in the field enough"
"reality?"
"something I don't understand at all"
などである」
といったようなイントロから始まる。
つまりは、そういった状況を打開すべく書かれたレビューということで、とても読みやすい。数式などはほとんどないし。すいすい読める。
かといって、内容的に物足りないかといえばそうでもなく、保全上での利用という観点から、行列モデル、メタ個体群モデル、空間明示型モデル、遺伝モデル、分布モデルなど、よく目にする一通りのモデルについて、基本的な構造からPVAなどへの応用の仕方、具体例なども含めてうまくまとめられていて、いい勉強になりそうです(まだ全部読んでないけど・・)。
意外と「保全におけるモデル利用」という観点でまとめられた文章は少ないような気がするので、鳥類学者に限らず、「モデルに拒絶反応がある人」、「自分では使ってないけどちょっと興味がある人」、「ちょっと片足をつっこんでいる人」あたりには勉強になるのではないでしょうか。
最後の方には
「モデルの賢い使い方」
みたいな項もあるので、楽しみにしています。
まだ読んでないうちでの紹介で申し訳ないですが・・・
今度の生態学会でも、保全管理問題における予測モデル利用については、いくつかシンポや自由集会がありますよね。日本の現場でも今後ますますモデルの必要性が高まり、利用も多くなっていくのではないかと思っています。