Metapopulation and Habitat paradigms

総説の準備中に読んだのですが、ちょっと総説の中には入らなかったのでご紹介。
Armstrong 2005 Integrating the metapopulation and habitat paradigms for understanding broad-scale declines of species. Conservation Biology 19: 1402-1410.
 最近(でもない?)よく見ますよね。こういう「分野の統合」が大事だという主張。いろいろな分野の長所短所が明らかにされてくると、自然と分野の統合が叫ばれるようになるんでしょうか。
 この論文はCaughley(1994)の論文で主張された、"small population paradigm (SPP)"と"declining population paradigm (DPP)"から始まります。著者は、"metapopulation paradigm (MP)"はパッチサイズや孤立度がパッチでの絶滅や定着の有無に与える影響に注目しているために、SPPに合致するとしています(ちょっと無理があるような。。)。一方で"habitat paradigm (HP)"というのは初耳でしたが、ようは「ハビタットの質をいろんな変数で表して、種のいる・いないを統計モデルで説明する」といったアプローチのことを指すらしいのですが、これはハビタットの質に注目しているため、DPPに相当するアプローチだと考えられるそうです。
 このSPP=MP, DPP=HPという結論はちょっと無理くりな感が否めないのですが、その後に書かれている、このMPとHPの統合が重要だという主張と、統合するための問題点、これまでの研究のレビューはわかりやすいものでした。
 ひじょうに簡潔にまとめると、"vital rates"(繁殖成功度や生存率)とハビタットの質の関係(MPであまり扱われてこなかった)を明らかにした上でmetapopulation dynamics(HPでは扱わなかった)を理解した研究は少ない、という感じでしょうか。この論文では直接は出てきませんでしたが、spatially-explicit population model (SEPM)の必要性が最近見直されてきているのと主張は近いと思います。
 さらにそのためには、 "intensive data collection"が必要なのはよく言われる問題点ですが、筆者は、1.過去のデータをうまく使え、2.不十分なデータの場合それを認めて探索的(仮説提示型)な研究としろ、3.対象種がいくつかある場合、対象を慎重に絞ってデータを集めろ、といった具体的な提言もしていて、この部分はそれほど新しくはないものの、好感がもてました。
 この研究もそうですが、最近大きなスケールでの研究の重要性が保全においてよく主張されているように思います。景観生態学の注目度が増しているのもその一例でしょうか。その中で、パターンとプロセスをつなぐために行動に注目したモデルが必要とされ始めているのは、僕の興味ともばっちり重なるので、今後是非取り組んでいきたいところです。