自分のやりたいこと。

これまで
「自分のやりたいことをアピールしなさい」
と言われたら、正直うまく言えないだろうと思っていた。もちろん、
「行動生態学の知識やモデリング技術を保全管理問題に応用する」
というのは、これからもずっとやっていきたいことだけど、どうも幅広くて大まかすぎる感じだし、もっと応用ばかりに囚われないところにも自分の興味はあると感じていた。最近少しは幅を広げて勉強するようになってきて、いろいろなパラダイム(使い方が正しいかわからない・・・)を面白いなぁと感じているものの、どうもこれ!という感触はなくて。スペシフィックな、それででいてより幅広い分野に一般的に貢献できる、「やりたいこと」。これを簡潔に説明し、その意義を主張できないことは、自分に最も欠けていることだと感じていたわけで。
そういったことを痛感したのが、ホームページの作成過程。国内外のいろんな研究者のページを見てきたけれど、老若男女(?)を問わず、デキる人のHP上での主張はどれも簡潔明瞭で鋭い!それに比べて作ってはみたものの、自分のページの主張のあいまいなこと。。。そんなこんなでこのところずっともやもやとしていました。自分が本当に興味のあることはなんだろう、と。
それが今日、なんとなくわかってきたような気がします。自分でも忘れないようにここに宣言しておくと、
「今、現れている特性(パターン)が、実世界の様々な制約下での個体のどのような意思決定によってもたらされているのか」
です!どうかな〜・・
ってあんた、そんなようなことを既にHPにも書いていて、いまさら改めて宣言するようなことでもないじゃん!という感じなのですが、やはり今日、ちょっとはっきりしたような気がするのです。これまでの研究で目指していたこととの違いを敢えて言うならば、これまではマガンという題材で、「採食行動」「保全管理」といったキーワードを基に必死にやってきた結果、必然的にそこに至っていたというか。だからこそ興味を持ったというか。マガンを見ていて、同時にIFDとか、Social Foragingとか勉強していて、「そんな藁の中の籾食ってんのに、次にどの群れに加入するのがベストなんて、分かるわけないじゃん」なんて普通に思ったことが、"不完全な情報下での群れ採食者の意思決定則"、という研究に自然につながったわけで。
個体が実際にどんな意思決定を行っているのか、ということは採食行動の分野で案外行われていないということは分かっていたのですが、今日以下の論文を読んで、あ、この考え方っていうのはもっと一般性をもってるのかな、と思ったのです。
Danchin and Wagner (1997) The evolution of coloniality: the emergence of new perspectives. TREE 12:342-347.
古っ!何をいまさら!?と思われる方も多いかとは思いますが。。無知をさらす恥を忍んで書きますと。。
コロニー性繁殖の進化というのは、これまで「繁殖場所の制限」、「捕食リスク回避」、「食物発見効率の増加」などといった個体の利益によって説明が試みられてきましたが、これらの説明の致命的な点は、利益と不利益の"通貨"が異なるためトレードオフを評価するのが困難で、また相互に排他的な予測を提示してこれなかったために、コロニー性の進化に対し共通した説明を可能とする枠組みを欠いてきたことだそうです。そこで筆者らが提示している、"Commodity selection"という説は、各個体が不完全な情報しかない中で、他個体の存在や繁殖成功度、またつがい相手の存在などを基に意思決定することで、繁殖・採食・捕食リスクなどさまざまな"commodity"をまとめて評価することができ、これによってコロニー形成が説明されるのではないかというものです。
この著者らはその後、public informationによる繁殖場所選択など、natureにも論文を載せていますが、他の研究もいろいろと進んできているようです。ともかく、一番共感できたのは、"In fact, by only focusing on the ultimate causes of coloniality, the economic approach neglects proximate mechanisms of breeding habitat selection, and thus cannot be used to predict trends in spatial distirbution of nests. The hypotheses that incorporate conspecific cueing into habitat selection allow us to make such predictions and may provide such a new framework."、という一説です。IFDとか、Producer-Scrounger gameとか、採食行動についてもそこに至るメカニズムがあまり探求されていないということは、これまでも強く感じていたし、最近少しかじったLandscape Ecologyの分野でも、パターンを生み出す個体の意思決定プロセスの重要性は主張されていたので、やっぱこれは結構いろんな現象で大事な部分でないのかな、と思ったというわけです。
まぁ目指すところというのはこれからどんどん変化していくのかもしれないですが、なんだか少し嬉しくて長々と書いてしまいました。。現実的にできること、という問題もありますが、当分のところはこんなことを常に忘れずに掲げて目指していきたいと思います。
とりあえずはホームページを少しは修正しなくては。。。