Metapopulationとsite fidelity

Matthiopoulos et al. 2005. Metapopulation consequences of site fidelity for colonially breeding mammals and birds. J Anim Ecol 74: 716-727.

という論文を読みました。わかりやすくてちょっと面白かったので紹介。
 古典的なメタ個体群モデルは空間的に孤立した「パッチ」からなる環境を想定していますが、コロニーをつくって繁殖するような哺乳類や鳥類では、この「パッチ」は繁殖の時期だけに動物の意思決定によって形成されます。すなわちパッチ間の分散は距離や障害物の有無だけでなく、動物の行動によって決定されるということ。
 この研究では、コロニー繁殖性の動物にメタ個体群の理論的枠組みを当てはめるため、動物が出生の場所に固執するsite fidelityに注目してモデル解析を行ったというもの。
 まずコロニー内でのみ密度に依存して低下する繁殖成功度を仮定します。コロニー内での個体数が増加し続ければ密度依存的な移出によって新しいコロニーが形成されるのですが、繁殖個体に強いsite fidelityがあると、各個体がそれぞれのコロニーにとどまっているうちに密度効果によって各コロニーでの個体数の増加が横ばいになります。その結果、移出が起こらなくなり新しくコロニーが形成されないので、この時点では生息地全体での個体群サイズも増加がとまって横ばいになります。ところが確率論的なイベントによって、一握りの個体が新しいコロニーを形成するとそこでまた急激に個体数が増加し。。ということが繰り返されると、全体の個体群サイズはいくつかの横ばい期間をもちながら増加していく、という経緯をたどるわけです(説明できてるんだろうか・・)。
 この話に興味を持ったのは、欧米の渡り鳥の研究でいくつかこういった個体群サイズの変遷が知られているためです。個体数が横ばいになったから環境収容力に達したかな、と思ったら新しい生息地が開拓され、さらに増加する、といったような。そういった経緯から、集合性(site fidelityだけでなくアリー効果なども)をもつ動物の個体群サイズ変化を予測するためには、非空間明示のモデルではなく空間明示(それも大きなスケールで)のモデルが必要となると考えられます。
 直感的には気づきそうなことなのですが、それを明示的に、しかも保全管理問題への提言を意識して、示したのがこの研究のウリということでしょうか。
ただ、このモデルではsite fidelityというのは決定論的に与えられていて(多分。)、どうもその辺はもやっとした点ではありますが。。。