帰ってきました。

tatsuamano2006-09-10

オックスフォード大学で行われたイギリス生態学会大会に参加し、昨晩イギリスから帰ってきました。
実質4日間の滞在であっという間でしたが、酸いも甘いも充実した4日間でした。
学会は全体の雰囲気としてはそれほど日本と変わりありませんでした。Conservation Ecology, Behavioural Ecology, Agroecology, Animal Ecology, Predator-Prey interactions などの口頭発表を回りましたが、研究のレベルもピンキリで、若い研究者が中心となって発表する場という印象でした。
そんな中でも日本との違いを感じた点も多く。誤解があることを恐れずに挙げてみますと。
ひとつには、純粋な科学としての研究と保全への応用を目指した研究との間の交流が、日本よりもずっと密であるように感じました。日本の学会では両分野の間にどうしてもギャップを感じます。自分自身もどっちつかずの立場にいるので両側の心情が分かる気もするのですが、保全生態学者を目指す若者は、理論やモデルといったものをどうしても敬遠しがちで、一方"純"生態学を目指す若者は、そんな"保全分野"の現状に魅力を感じず自ら関わろうとはしないといったように。向こうの生態学会でのConservation EcologyやAgroecologyで発表する若者の多くは、背景の理論が明確であったりモデルを自分で作っていたりしていて、"純"生態学での知見を利用し、また自分の研究に一般性を持たせることでフィードバックもしようとする気概を感じました。多くの発表で使われていた、"Evidence-based conservation"という言葉もそれを示すひとつです。その点、生態学の知見を生かした保全研究を目指している自分にとって大きな刺激となりました。
ちなみに、学会は、会長であるLawtonの"Ecology, Politics and Policy"という話で始まりました。生態学者の提言はなぜ政策に反映されないのか、どうしたら両者のすり合わせができるのか、という内容。これに表わされるように、生物多様性損失のプロセスや原因を理解する段階を経て、これから何をすべきか、生態学者が責任をもって探っていこうという雰囲気が強かったように思います。
あとは大したことでもないのですが。。
農地環境での研究に対する注目度はやはりかなり高かったです。そういった発表になると、会場にどやどやと人が詰めかけてきたりして。その中でも鳥を題材とした研究は、データの厚みが半端でなく、中心的な役割を果たしていました。
あとはみんなほぼfundを取ってる。若い人でもほぼ確実になんらかの形で。これは論文を書くのと同じくらいに奨励されているんでしょうか。厚みのあるデータを取るためだけでなく、プロジェクトを担う責任感や先を見通す力など、多くのことがfundを取ることで養われているのではないかと感じました。この関係もあってか、プレゼンの最後ではかなり丁寧にみな謝辞を述べているのが印象的でした。
プレゼン自体は、聴衆の引き付け方がうまいと感じました。僕なんぞはパワポを念入りに作ることに労力をかけてしまうのですが、多くのプレゼンファイルは非常にシンプルなもので(まぁ細かく作れないだけかもしれませんが・・)。その代わり話し方は非常に抑揚があり、強調すべきところ、理解して欲しいところがわかりやすく、自分も見習いたいと思いました。
残念だったのは、発表にキャンセルが多かった!日本ではほとんどないので、受付で渡されたキャンセルリストなどに目も通さずに発表を聞きに行って、その場でキャンセルを知ってがっかりしたことが何度かありました。
自分の発表は。。。
やはりここが一番「酸い」ところでした。。まずポスター発表というのはあまり注目度が高くないように感じました。今回たまたまかもしれませんが、ポスター会場は実験室。狭くて人もあまり入りません。発表数も日本の大会に比べたらかなり少ない数でした。一応一日中貼ってはいますが、ポスター専用の時間は一時間だけ、コーヒーかワイン(!)を飲みながらの時間です。あとはやはり自分の英語力も問題でした。何人かは質問もしてくれたのですが、人によってかなり質問内容の理解できる程度が異なり、議論が弾まない一番の制限要因になっていることは間違いありませんでした。自分の扱っているような、個体の行動に注目した応用研究はイギリスではよく行われているので、似たような手法を扱う人達が見に来てくれたのがせめてもの救いでした。とにかく、今後しばらくは英語力も含め、海外の学会でも自分の存在をアピールできるような発表をすることを、大きな目標の一つとしていきたいと思います。
↓見事に横長の掲示板に縦長のポスターを作ってしまったの図。

他には・・
学会でアレンジしてくれた宿がSt Anne's Collegeにある学生寮(?)でプチOxford体験をしてみたり。

合い間には歴史的な建造物を訪れてみたり。天気も気候もよく、快適な数日間でした。どこ行っても食事の量が多いのにはちょっと辟易としましたが。。


研究の面でも、また私生活の面でも、新しい事実を知り、新しい世界を体験できるというのは、最も刺激的で楽しいことだと思っています。そういった点で、海外経験の少ない自分にとって、短い期間ながらもまたこうして酸いも甘いも経験できたのは、貴重な機会だったと感じています。これからも少しでも多く海外に出て行きたいと思っていますし、そのために努力していきたいと思っています。
そしてまたそういった大きな目標が明確になったことを、とても嬉しく思っています。