インパク値

"Thomson Scientific - インパクトファクタのすべて -"
というオープンセミナーが、物質・材料研究機構というところで行われるとのことで行ってきました。正直初めは冷やかし半分でしたが、なかなかに面白かった。
内容はというと・・・
どうやら東京でもほとんど同じセミナーがあったようで、MRMTさんが詳細に紹介してくれているので、そちらへどうぞ
もっともこちらはタダ。でしたが(笑)。
James Testaさんがメイン的扱いでしたが、その後に話した宮入さんという方がずいぶんと頭の切れる方で、プレゼンの内容も質疑への応答もこれ以上ないというほど明瞭、気持ちよく話を聞くことができました。Bibliometrics(計量書誌学)という分野があるのですね。
話の論点として最も強調されていたのは、IF値の誤用についてでした。「個人/機関IF合計値」など評価基準としての誤用には、1955年にIF値のコンセプトを発表したGarfieldさんも嘆いているそうで。当初の目的は、引用関係を利用した効率的な文献検索や分野のコアジャーナル検出、といったところにあり、今やこの概念は科学全体にずいぶんと恩恵をもたらしているのは疑いようもありません。一方で、当時は想像できなかった形で利用されている現状を、核エネルギーになぞらえて指摘しているのが印象的でした。
ちなみに現職場でも、「年間IF合計値○○を目標とする」と堂々と掲げていますね。。目標値が何に基づいているかよく分からない上、異分野もごたまぜにしてしまっているので、悪い例として紹介されてもおかしくないくらいですね・・・関係者誰か聞きに来てたんでしょうか。。
うまいこと引用・被引用データを評価基準として使うには、分野の違いを考慮することが必要となるのですが。結局のところ絶対的な指標は作れないので複数観点からの評価が重要、という最も一般的な結論になっていました。
ただいくつかこれまで知らなかった面白い観点があって。

  • 分野による引用動向の違いがデータになっている

Journal Citation Reportsでは、分野全体としてのIF値(Aggregate IF:全体での被引用数/論文数)や、IF値の中央値がまとめられています。"Ecology"はAggregate IF値でみると、170分野中51位です。分野IF値が低い低いと言われていてもそこまでではない感じ。

  • 分野の違いを考慮した機関/個人の評価も試行されている

Essential Science Indicatorsというサービスがあるそうで。見ることできないので恐らくレアな有料オプションと思われますが。こちらでは出版年や分野別に算出した被引用データや、それらに基づいた平均被引用数の期待値などを利用して、各分野での機関/個人の評価を行っているようです。ちなみに物質・材料研では、このオプションを有効活用して評価を行っているそうです。確かにどうせIF値を業績評価に使うならこのくらいすべきですよね。
そこで、2004-05出版論文と2006被引用数から「自分IF値」を出してみると・・→ 2.66 (おっなかなかいいか??)
でも自分引用を除くと・・→ 0.66 (・・・)
もっとインパクトのある研究目指さなくてはならんですね。
一方で、MRMTさんの文章にもありましたが、雑誌編集側にとってIF値をつけてもらえるかどうかという点も重要論点のようでした。何でも毎年2000の雑誌を新規審査しているそうで。IFの細かい値はともかくとして、やはりついているかいないか、そしてある程度の値かどうか、は投稿する側にとって基準になるのは間違いないですものね。新規審査の際、その雑誌がIFをつけるに値するかどうかの判断基準として、掲載論文を書いている著者の他論文のインパクトを見るそうです・・・
う〜ん、雑誌編集、大変そう。。。(ヒトゴトですんません)