ツカの間。

 今日は論文書きとシミュレーションの合い間に少し時間ができたので、久々(!)に気になってコピーしておいた論文(←どんどん増えていく。。)のなかからいくつかをのんびり読んだ。

  • Maclean et al. 2005. Testing the assumptions of the ideal despotic distribution with an unpredictable food supply: experiments in juvenile salmon. J. Anim. Ecol. 74:214-225.

 以前はあまり読まなかったけれど、最近サカナの論文を読むことが多い。鳥はもちろんのことだが、魚も採食理論などの研究の題材として昔からよく使われていて、扱っているテーマも「パッチ選択」とか「群れ形成」とか、僕の興味とかぶることが多い。
 この研究は、結構大がかりな実験設備によって「野外に近い」環境をつくりだし、Atlantic salmonを使ってIdeal Despotic Distributionの予測を検証したもの。結論としては、野外に近い環境では、変動するパッチの質を個体がうまく評価できないし、サンプリングにもコストがかかるので、理論の予測は当てはまらなかった、と。
 予測に当てはまらなかった行動の結果、採食成功はどうなっている、とか、代わりにどんな採食を行っている、とかについてはあまりふれておらず残念だったけれど、ちょっと興味深かったのは論文の構成。
 基本、ネガティブデータばかりなのである!「関係がなかった」とか、「ランダムと変わらなかった」とか。
 理論の実証研究というと、やっぱり「理論にあってます!」的な研究が多い印象があるが、厳密な実験計画と裏づけデータがあれば、ネガティブデータだけでも立派な研究になるんだ、とちょっと感心。もっとも、いまさら「ideal despotic distributionに従ってました」だけではイマイチなので、むしろ理論に従ってないことがこの研究のウリであるし、特に野外の系で理論を適用するときには、野外のconstraintsに注目しなければならないのは僕の研究でも言いたい点である。
 ただ、ちょっと気になったのは、これって著者たちはもともとどっちのつもりで実験始めたんでしょうね?始めっからこの結論を目指してないと、予想外のネガティブデータだけでは穴があったりしてうまくまとめられないですかね、やっぱり。ここらへんは実験をやっている人がどんな感じで始めるのかちょっと興味があります。
 あ、もうひとつ論文紹介するつもりが、長くなったのでこの辺で。。