農業と野生動物

D論もいよいよGeneral Discussionを書く段階となり、おさらいも含めて「農業と野生動物」について論文を読んでいる。
"Farming and the fate of wild nature" (Green et al. Science 2005 307:550-555)
は、農業活動(特に発展途上国での)が鳥類の絶滅危惧種に対して脅威を与えていることを簡単にレビューした上で、非常に簡単なモデルを用いることで、
「"自然にやさしい"けど、収量の低い農業を広い農地で行う」
のと、
「"自然にやさしくない"けど、収量の高い農業を限られた農地で行い、残った土地は手付かずにする」
のどちらが個体群維持に貢献できるか、という問いに取り組んでいる。結論としては「収量-個体群サイズ(密度)曲線」の形を知ることが重要だというもの。
 著者も認めるように単純化に伴ういくつかの限界はあるものの、非常にシンプルでわかりやすい話だった。奇しくも以前の日記で書いた、モデル研究の果たす役割、「直感では思いつきそうにないことを提言する」、というのはこんな研究かなとも思った。
 日本ではまだまだ「農業と保全管理」というテーマの研究は少ないように思うけれど、両者の利害関係がわかりやすくぶつかっているだけに、やっぱり興味深い分野ですな。