マガン管理

tatsuamano2005-12-01

D論の総合考察を書く過程で、ガン類の引き起こす問題と管理についてもおさらい。
 日本でのガン類の保全管理において最も足りていないのは、個体群動態に関する情報ではないだろうか。
現在の個体数は増えてるのか増えてないのか?
時期ごとの死亡率はどうなのか?変化しているのか?
繁殖成功度は?
密度依存のプロセスは働いているのか?
生息地間の移動はどのくらいあるのか?集団は一緒か?
 ごく基本的な情報もわかっていないことが非常に多い。欧米と厚みがもっとも違うところでもある。もっともこの現状には僕ら東大のグループの責任も大きいと思う。日本ではガン類の(鳥類の?)観察やデータ収集の多くはアマチュアの観察者によるもので、それら長期にわたるデータの中には貴重な情報も含まれていることがあるものの、それを解析して結論づける研究者がまだまだ少ないように思う(もっともいくつかの種では長期のデータに基づいた取り組みが始まりつつあるけれど→バードリサーチ / Bird Research)。
 僕自身も、学部4年生から今にいたるまで、研究の重点のほとんどはマガンの採食行動についてだった。これはもちろん興味があったからというのが一番ではあるが、少しでも世界レベルの研究に近づこうという気持ちがあったからでもある。上に記したような、「基礎的な情報」(これはマガンによる食害問題についてもそうだが)の現場での必要性というのもよくわかっていて、特に調査地では「ドクター最後には結論を出せそうなD論用の興味深い研究」と「シーズンごとに結論を出せる、より実用的な研究」という2本立てで調査を行ってきたつもりだけれど、そこは所詮学生。どうしても後者はおろそかになりがちだった。
 以前の日記でもちょろっと書いたけれど、今の論文が片付いたら、本格的にこの残された仕事にも取りかかるべきときだなぁと思う。