気まぐれ論文紹介

Fryxell et al. 2005 Landscape scale, heterogeneity, and the viability of Serengenti grazers. Ecology Letters 8: 328-335.
2004年(Ecology 85:2429-)に著者らが発表したトムソンガゼルの移動(?)に関する予測モデルを利用したPVA研究。初めのモデル論文を見たときは、「確かにモデルはできてるけどそれで?」といった感じだったけど、そりゃ一連のプロジェクトですよね。
セレンゲティでは降水量に空間的な自己相関があり、植物の分布にも偏りが生じるので、それを採食するトムソンガゼル個体群の存続には、>1600km^2という広大な面積が必要である、という結論。
空間的な異質性が個体群の存続に貢献するというのは全く新しい話でもないし、フィールドでも明らかなことだったんだと思いますが、こうやって実際のパラメータに基づいたモデルで空間明示な定量的提言を行ったことには、やはり価値があると思います。誰もが何となく頭に思い描いていることをきちっと定量化する、というスタンスも僕は好きで、重要だと思っています。この研究も保全管理問題における空間明示型モデルの有用性を的確に示した一例ではないでしょうか。
著者らはトムソンガゼルがある程度資源量の分布に対応した生息地選択を行うと前提しているのですが、この前提をゆるめてランダム分散を仮定した途端、すぐ絶滅してしまう、という結論も僕的にはだいぶヒットでした。
ちなみにこの論文、だいぶ前にプリントアウトして、しばらくバッグの中(=優先度高い)に入っていたのですが、ようやく読みました。。
ようやく読んだつながりでいきますと。
Hierarchical partitioningとVariation partitioning。
しばらく前から名前を聞いていたものの、ずっとほっておいてあったのですが。。相変わらず区別のつかないままなので、ふと思い立ち、ようやく少し論文を読みました。
Hierarchical partitioning:
Mac Nally R. 2000. Biodivers. Conserv. 9: 655-671.
Variation partitioning:
Borcard et al. 1992. Ecology 73: 1045-1055. Legendre, P. 1993. Ecology 74: 659-1673.
どちらも分かりやすく勉強になりました。両手法の違いを明確に述べろと言われたらまだ自信がない部分もありますが。。