スタンス

Ludwig et al 1993 Uncertainty, resource exploitation, and conservation: lessons from history. Science 260:17, 36.
読みました。古い論文ですが、最近保全への提言を目指す研究者としてのスタンスに頭を悩ませている身としては、改めて勉強させてもらったという感じです。
文章の最後に、研究者に向けたというよりは、保全に絡む利害関係者全員へのメッセージという感じで、
Some principles of effective management
という5つの提言があり。
1) Include human motivation and responses as part of the system to be studied and managed.
2) Act before scientific consensus is achieved. ・・Calls for additional research may be mere delaying tactics.
3) Rely on scientists to recognize problems, but not to remedy them. The judgement of scientists is often heavily influenced by their training in their respective disciplines, ・・
4) Distrust claims of sustainability.・・Such a claim that basic research will (in an unspecified way) lead to sustainable use of resources in the face of a growing human population may lead to a false complacency.
5) Confront uncertainty. Once we free ourselves from the illusion that science or technology (if lavishly funded) can provide a solution to resource or conservation problems, appropriate action becomes possible.
という感じで書かれていました(一部抜粋)。
どの項目も、インパクトを与えるために極端な書き方をしている感もありますが、これを読んでいて、自分の研究者としての保全管理問題へのスタンスというものが、いかに曖昧なものかということを痛感させられました。
特に3)からは研究者の役割について考えさせられます。確かに問題を解消していくのは、分野横断的な、泥くさい努力が必要だとして、それでは研究者が頼られるべき、"recognize problem"とは何なのか?今思いつく限りでは、やはり「研究者でないと気づかせられない事実」でしょうか?ブラックバスを駆除するとザリガニが増えて他の生物に影響及ぼすとか。温暖化で餌の発生ピークと渡りスケジュールがずれて渡り鳥が減少するとか。コイには実は野生型と飼育型がいましたとか。もうひとつの形としては、「予測」なのかなとも思います。シカやマングースはどう駆除したらいいか。風力発電は本当に鳥の個体群動態に影響を及ぼすのか。これらも研究者でないと示すことはできないでしょう。
果たして自分がそういう研究をできているだろうかと、はたと思います。
4)も非常に耳が痛い。。基礎研究が応用に役立たないとは全く思わないし、むしろ基礎研究がないと、上記のような問題を認識させるという研究者の役割は果たせないでしょう。ただ一方で、基礎研究に応用のニオイをただよわせて自己満足している自分も確かにいます。「応用に自分の研究を役立てたい」と思いつつも基礎に近い研究の魅力も捨て切れず、応用のためにはもっと早急にやるべきことがあるのに、どっちつかずの研究で自分を満足させているという二面性が、いつも自分の中では悩みの種となっています。結局自分はどっちにも貢献できず、どちらからも認められないんじゃないかと。
5)は、予測を目的とする場合はもちろん、野外データの解析を解釈する際にも重要なuncertaintyについて。この対処法というのは、まだまだ自分の中で消化しきれていません。次につくる予測モデルではこの問題に正面から取り組みたいと考えています。
とまぁ連日の長文となってしまいましたが、今回最も強く感じたのは、決して自己満足ではなく、自分の研究が、基礎の分野で、応用の分野で、本当にどれだけ貢献ができるのか、という自問の姿勢を常にとっていかなければならないと。当たり前だけど、ふと気を緩めると忘れてしまいそうなことです。