D論打ち止め

無事受理されました〜。
Amano, Ushiyama, Fujita & Higuchi (in press) Predicting grazing damage by white-fronted geese under different regimes of agricultural management and the physiological consequences for the geese. Journal of Applied Ecology.
散々悩んだ挙句、言われるがままにタイトルを直しました。。。
宮島沼に渡来するマガンの農業被害問題に対し、根本的な被害対策を提示するだけでなく、その対策がマガン自体に及ぼす影響をも評価することで、農業生産とマガンの保全を両立させようという内容です。
様々な農地管理法の下での農業被害の程度とマガンによる脂肪蓄積の程度を、個体の意思決定則を基盤としたモデル(Ecol Monogr 2006で発表済み。というかむしろこのために作った。)によって予測しました。評価した農地管理法(農業被害対策)は、(1)試験的に行われてきた代替採食地の設置、(2)主要な食物である落ち籾を減らす農業活動の規制、(3)被害の対象となる小麦畑の配置転換、という3つです。(1)はコストを上回る農業被害軽減の効果が予測されたもののその絶対値は比較的小さいこと、(2)、(3)の対策はマガンによる脂肪蓄積に大きな影響を与えないまま農業被害を軽減できること、また(2)、(3)の対策は、渡来個体数がある程度増減しても被害軽減の効果が持続し、一方で個体数のさらなる増加や減少を助長しないこと、などが予測されました。
タイトルの、"Predicting 〜"というのは、研究を始めた大学4年のときから憧れていた言い回しです。応用科学に携わるからには「予測」を目指さなくては、とマガンの保全管理に利用する予測モデルを作るため、信頼に足る予測の基盤となりうる個体の意思決定解明からずっとやってきた研究の集大成ということになります。D論の内容もこれで出し切ったことになり、ちょっと感慨深いです。
今となってはますます、生物という「ソフト」な対象を前にあまり軽々しく「予測」という言葉を使えないなという思いもありますが、予測のためにはやはり理解が必要ですから、応用科学を目指す身としても、基礎科学に貢献したい身としても、今後も「予測」というのは意識して研究に取り組んでいきたいと思っています。