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tatsuamano2008-10-05

10月に入ってようやく新学期が始まったらしく、街や大学に若者が一気に増えたような気がします。いつも閉まっていたドアが開いていたり、暗かった場所に電気がついていたり、突然隣の部屋で講義をやっていたりして、何だか雰囲気がだいぶ変わりました。
僕の所属している研究室にも新たに3人の学生が加わり、僕は一か月だけ古株、でもこの国自体は超素人、という何とも微妙な立場です。。。
それはともかく、先週木曜にはUniversity of East Angliaをビルと同じ研究室の修士生と共に訪問しました。ジェニー・ギル、リチャード・デービスという研究者にそれぞれ研究相談をするためです。
ケンブリッジ駅から電車に揺られること1時間少し、Norwich駅からさらにバスを乗り継いで、巨大なキャンパスに到着しました。建物はケンブリッジとは対照的に近代的なビルで、こちらでも新学期が始まり学生があふれかえっています。
リチャード・デービスとの研究相談は同行した修士生のものだったのですが、せっかくなのでおじゃまさせてもらいました。彼は全世界を対象に、鳥類の種数と様々な説明変数を緯度経度の1度〜4度ずつに区切って整理し、その関係をモデル化したというすご腕のマクロエコロジストです。今回同行したこの修士生はこの秋から加入したてなのですが、ビルと事前に相談してなかなか面白い研究テーマを考えています。ビルの仲介もあって、リチャード・デービスと相談して共同研究に発展するという流れを間近で見させてもらいました。彼女にとっては順調な第一歩と言えそうです。イギリスの修士生は1年で終わる人が多いのですが、たった1年でもこうしてアイデア一発で一流の研究者との共同研究にすぐ発展させられるというのは、やはり素晴らしい環境です。
僕もただ横に座っているだけでは…と思い、果敢に(?)リチャード・デービスに向かって解析上の質問をしてみました。が、何だか英語でうまく説明できず自滅でした。。。
その後は僕にとっては本番となるジェニー・ギルとの研究相談です。ジェニーはとても気さくな人で、「あなたの研究はよく知ってるわ。」と声をかけてもらいました(投稿論文のエディターだったこともあった…)。あらかじめ数枚の構造図を準備していたこともあって(そして何より自分の専門分野なので)、こちらでは無事伝えたいことも伝えることができ、ジェニーとビルとで充実した議論をすることができました。まぁもっともちょっと気を抜くと英語がぶゎーっと頭の中を埋め尽くし、そのまま流れ去っていってしまうという感じで、一通り話し終えた頃にはどっと疲れが出て軽い頭痛まで。。。
ここでもふと我に返ると不思議な感覚に包まれます。ジェニー・ギルという研究者は以前ガンの研究をしていたこともあって、ビルとともに僕にとっては研究者人生のまさに最初からずっと論文を読んできた研究者でした。もちろん他の海外研究者もそうなのですが、言うならばそれはゲームや小説のキャラクターみたいなもので、「あ、今度はこんな論文出したな」とか、「最近はこっちの研究も始めたんだな」とか妙にその人について事情通なわりに、情報は全て二次元なわけです。それが今は一枚の紙をまんなかにジェニーとビルと僕、3人で頭を突き合わせてウンウンうなずいている、というのは、そのキャラクターが突然現実のものになったという感じで、何かまだ、二次元の彼らと、現実の彼らと、うまく結び付けられないような感覚でいます。
ともかく一連の研究相談は無事終わり、ジェニー・ギルと議論を発展させられた充実感と、リチャード・デービスにうまく質問できなかった敗北感を噛みしめながら、電車に揺られて帰途につきました。車窓の外には相変わらず一面farmlandが広がり、この国でfarmlandの研究が進んできた理由が何とはなしに感じられたような気がしました。
来週月曜にはやはり農地生態系の研究が盛んなUniversity of Readingでのプロジェクトミーティングに参加させてもらえることになりました。また新しいキャラが出現することは間違いなしです。