ロイアル

tatsuamano2009-07-30

最近公開されたハリーポッターの最新作を見に行く機会がありました。こっちで歴史そのもののような大学にしばらくの間滞在してきて、この映画のバックグラウンド、とりとめもない事実関係だったりしますが、もだいぶ分かってきたように感じました。ハーマイオニーことエマ・ワトソンケンブリッジ大に受かったという話がありましたが、あまりに有名すぎるイギリスを避け、アメリカでのひっそり(?)した大学生活を選択するようです。
今朝は珍しく悪夢で目が覚めました。起きたら1時半で、1時からのRSPBでのトークをミスるという夢です(ベタ…)。実際のところは分かりにくそうと思っていたRSPB本部に難なく1時間前にたどり着きました…
RSPB本部は「城のようなところ」と聞いていましたが、なるほど城みたいでした。といっても実際は昔の領主かなんかの建物を利用しているそうです。BTOもそんな感じだったような…古い家を買って改修していくイギリス人のDIY精神が反映されているんでしょうか。敷地には保護区も併設されていて、働く場所としては本当にうらやましい限りですよ。
重厚すぎるエントランス
リチャード・グレゴリーに紹介されて、数十人の前で学部やバス大学で行った内容でトークを行いました。既に半ばニューアルバムを引っ提げて全国ツアーを回っているアーティストの気分です。反応は概ね好評で、意義も内容も分かりやすかったと言ってもらえました。何より、質疑に対してはこれまでの中でも最も満足のいく回答ができ、これもトークも何度もこなした成果かなと感じました。
その後には、リチャードと彼の部屋でいろいろ話をする機会にも恵まれました。以前にも書いたように、彼はEuropean Bird Census Councilが主体になっているヨーロッパ全土での鳥類の個体数変化傾向の把握に取り組んでいます。その結果は下のような報告書にまとめられていますが、この報告書の裏表紙には協力機関として36ものヨーロッパ各国の機関が記載されており、こういった仕事の裏にある多大な努力・根回しが容易に想像できました。

最近では全世界規模での取組みも始めようとしているようです。全世界にパートナーを持つバードライフ・インターナショナルとのプロジェクトであるため、北南米とのコミュニケーション、アフリカ各国でのモニタリング体制整備など、徐々にではあるものの着実に進んでいるという印象を受けました。日本の鳥類モニタリングもこういったプロジェクトに加わるためには、有無データではなく個体数データが必要になります。特にこの辺が繁殖鳥類調査でどうなっているかは、今度の鳥学会でいろいろ話を聞けるでしょうか…?
ヨーロッパでのモニタリング体制については、下のような小冊子が発行されているそうです。モニタリングの意義、調査の詳細な方法、データの管理・解析方法、得られた結果の使い方、国際協力まで、この小さな冊子に一貫してまとめられ配布できるようになっています。

ヨーロッパでの生物多様性総合評価にもアドバイザリーボードとして密接に関わっているらしく、個体数指数の結果や温暖化の影響評価指数などもEuropean Environment Agencyによる報告書に採用されており、RSPBは(BTOも)行政機関と非常に密接なつながりを持っていると感じさせられました。500人いるという職員のうち、国際関係対応部門など、研究者以外の職員がかなりの割合を占めるというのも必要あってこそのものかもしれません。
ただこれらの取り組みの結果分かってきたことは、「2010年までに生物多様性の減少をストップさせる」というヨーロッパの2010年目標は達成できなさそうだという現実です。ポスト2010年目標についてはまさに今議論の最中だということでした。
他にもお互いの研究内容など話が弾みました。何度か具体的な共同研究の可能性なども提案してみたのですが、すぐに何かが始められるというところまでは行きませんでした。やはりそうそうビルのようには話は進みませんね。。ただルース・コネクションがまた作れたということで、今回の目標は達せられたと思います。
リチャードは非常に気さくな人で英語も聞き取りやすく、ケンブリッジ大とは近いのに意外にあまり関わりがないこと、またBTOとは多くの共同プロジェクトを持っているもののその間には微妙なテンションがあることなど、裏話もいろいろ聞けて楽しい時間を過ごしました。ビルと同じように娘が描いたという鳥の絵を壁に貼りながらも、バードウォッチャーにはなりそうもないと嘆いていたのが印象的でした。
3月にはスペインで関連の会議があるようで是非と言われました。帰国後、こういったコネクションをどう保ち、利用していくか、それがまた重要な課題となりそうです。