無事に帰国してから早1ヶ月半が経とうとしています・・・
元の生活に戻るというのは寂しいほどに簡単で、今となってはビルや他の人とのメールのやり取りだけが、確かにケンブリッジに自分が滞在していたことの証のように感じられます。
9月中は東大の出身研究室で帰国セミナー(?)を開いてもらったり、函館で行われた鳥学会大会で発表を行ったりと、それなりに充実した研究生活を過ごしました。
10月に入ってからは、先週職場が主催したシンポジウムにビルを招待する機会がありました。
ワークショップで西欧の農地における生物多様性保全について話をしてもらっただけでなく、自分の調査地に連れていったり、つくばの居酒屋に連れていって飲んだりしたのは何とも不思議な感覚で、「しっかり案内(接待?)しなくては」とずいぶん気を使って疲れたものの、貴重な経験でした。
そんなこんなで4日間ほぼ行動を共にしたので、研究や教育に対するスタンスをゆっくり聞く機会があったり、アジア水田地帯における生物多様性保全にどういったアプローチができるかについて時間をかけて議論したりすることができました。
改めて強く印象を受けたのは、彼の旺盛な好奇心と情報収集能力、系統的な問題整理、そして素早い実行という一連の問題解決プロセスです。調査地を訪れたり他の人の発表を聞いたりした過程で多くのことに興味・疑問を持ち、議論によって必要な情報を集め、課題を論理的に整理して現状での解決策を提案する、という一連の思考プロセスを傍で見聞きすることができ、目の覚めるような思いでした。
そういったプロセスの結果として彼の提案する「解決策」は、誰しもが何となく思い描いていて、その必要性も感じていたことだと思います。しかし一方で、これまで誰しもが思い描くだけで何の形にもしてこなかったことです。実際に政策立案者とやり取りしてきた経験に基づく言葉にはさすがに重みがありました。
"All know the way, but few actually walk it"
何年も前に偶然知ってから、自分の研究スタンスを考える際に影響を受けてきた格言です(達磨大師の言葉だそうですが、原文は知りません…)。
生物多様性保全の問題を考える際には、この4日間で学んだような、真っ向からのアプローチがもっと必要なのかもしれません。
今何が問題で
何を知る必要があって
何ができて、何ができないのか。
その過程で挑戦的な課題が見つかってくるような気がします。そしてこのアプローチは、スケールや対象を問わず、普遍的に有効なアプローチなのかもしれないと感じています。