隣国

tatsuamano2009-10-28

アジアの隣国、韓国には不思議とこれまで訪れる機会がなかったのですが、数年前から参加している日韓共同研究の年次協議会のため、短い期間ながらも訪れることができました。
訪問先の韓国農業科学技術院は仁川空港からバスで2時間弱の水原(スウォン)にあります。自分の課題はカウンターパートが人事異動でいなくなったこともあり、理想的な共同研究という形にはなっていないのが残念な点ですが、以前伊豆沼へ案内したパクさんや10月頭につくばで行われたシンポで知り合ったバンさんなどと情報交換し、韓国の国立機関の様子を垣間見ることができました。
スウォンの市鳥はサギ(目がヘン…)。
盛大な晩さん会で胃を痛めた(…)翌日はソウルへ移動し、個人的に知り合いのサンドン・リー氏を梨花女子大に訪問。この大学はソウル中心にあるおしゃれ私立女子大ということで、地下鉄駅から校門までずっと周りが女子大生という衝撃体験(笑)もしましたが、以前つくばのシンポに来てもらい、その後は東大でサバティカルを過ごしたという何かと日本とつながりのあるサンドン・リー氏は突然のアポだったにも関わらず温かく迎え入れてくれました。
近況を話した他にも、せっかくということで思いつきの共同研究らしきことも提案してみたところ、今後具体的に取組みを始められる可能性も見出すことができ、予想外の収穫となりました。
その後、ポスドクのキムさんにソウル南西部に位置する湿地帯へ連れて行ってもらいました。見渡す限りの干潟に数えきれないほどのダイサギ、ツクシガモ、ホシハジロキンクロハジロなど、またオグロシギアオアシシギセイタカシギなどのシギチも間近で見ることができました。アッケシソウの群生する塩性湿地には2万のマガンとヒシクイもねぐらを取っています。
広大な干潟
ただ何とも複雑なのは、この湿地は海上道路によって陸地とつながれており、周囲は堤防によって囲まれた地域に位置しているという事実です。塩性湿地に隣接する水田では、塩分濃度が高いため収量や米の質も低いそうですが、それでも湿地から水田への転用は今後も進み、いずれは工場用地になるだろうとのことでした。特別大きな保全活動もないようで、これらの湿地を利用している生物の生息地がいつまで存在するのかは正直わかりません。韓国沿岸を含む黄海はアジア‐オーストラリアフライウェイを利用する多くのシギ・チドリ類にとって重要な生息地で、ここでの生息地消失は現在世界的にも大きな問題となっています。
塩性湿地に隣接する水田。ところどころで枯死した稲も。
ちなみに案内してくれたキムさんはwater deerと呼ばれるシカを研究対象としており、帰国後調べてみたところ、「キバノロ」と呼ばれる「珍獣」で驚きました。キバノロは韓国では落ち籾(や時には収穫前の籾)を食物とすることで近年増加しているそうです。湿地を侵食しつつある水田で夕陽に照らされながら悠々と籾を食むキバノロの姿は、この地域における急激な土地利用変化の影響の複雑さを象徴しているかのようで、何だか考えさせられました。
キバノロ
ヨーロッパの国々での盛んな交流を見るにつけ、アジアの近隣諸国と交流することの必要性を実感していたのですが、今回は短いながらも貴重な経験をすることができました。今後も交流を続け、多くのことを学べればと思っています。
海鮮鍋(旨)
ソウル・ビル街