渡英

tatsuamano2011-08-30

直前までかなりバタバタとしていましたが、8月26日に予定通り出国し、イギリス・ケンブリッジに到着しました。こちらでは少し冷たい風の心地よい秋空が広がっています。
2年ぶりにケンブリッジにやってきてどんな気持ちになるだろうといろいろ想像していたのですが、街並みを歩いて感じたのは少し妙な日常感でした。真っ青な空、緑の公園、荘厳なカレッジの建物、石造りの家並み、何も見てもあまり違和感がなく、まるでずっと住んでいたかのような不思議な感覚におそわれました。2年という期間は、この街の変化していくスピードに比べればほぼ無視できる短さなのだと思います。
「海外での研究生活」を経験することが目的だった3年前の渡英とは違い、今回の目的はその後広がった研究ネットワークを最大限に生かして自分の研究を発展させることだと考えています。その意味で、この地に足ついた感覚は我ながら頼もしくも感じています。

4月から東京大学で過ごした5ヶ月間はとても充実した時間でした。5年ぶりに戻った大学と研究室は何だか自分の実家のようで、わがままを聞いてサポートしてくださった先生方には益々頭の上がらない思いです。多くの学生さん達との出会いもまた大切なものとなりました。様々な悩みを抱えながら前に進んでいく姿は僕自身にとっても大きな励みとなり、学生だったときにはわからなかった大学の良さを見たように思います。もともと自分が今回のような判断をしていなければあり得なかった出会いです。今後もずっと大切にしていきたいと思っています。

出国直前になって、今年度の海外学振追加採用に内定したとの知らせを受けました。学振にはDCからPDと振られ続け、もう縁がないものと思っていましたが、ここへきて最後の砦になっていただきました。それこそ頭が上がらない。。(笑) もともと無給の覚悟で決めた渡英ですが、今後研究に没頭するためには幸先いいスタートとなりました。

前回ケンブリッジに滞在してから、もっと国境にとらわれない研究活動をしたいと漠然と考えていました。そうすることで自分自身の可能性も、研究のインパクトも、ずっと高められると実感したためです。日本に戻ってもヨーロッパの人達と連絡を取り合いながら共同研究し、イギリスに来てからも日本の人達とのつながりを意識しながら研究する。違いは自分がベースとしている場所だけという、思い描いていた研究のスタイルに、少しずつ近づけているような気がします。今回の滞在でもこれまで以上に新たな出会いに恵まれ、多くの新しい経験ができることでしょう。ヨーロッパ、日本を始めとしたアジア各国、その他多くの国々にネットワークを張り巡らせ、その中で自分の研究と人間性を高めるような時間を過ごしていきたい、と決意を新たにしています。
最近読んだ本で、30歳の誕生日の過ごし方がその人の人生を表す、というフレーズを知りました。前回の渡英がちょうど30の誕生日(の二日後…)。そして今日、33の誕生日もこちらで迎えることになりました。3年前に渡英したとき、また2年前に帰国したとき、いい意味で自分がどうなっていくか分からないと感じたのですが、今回はその自由な高揚感とともに、自分が目指していきたい方向性とそのための土台が、少しずつできてきているような感覚を確かに感じて始めています。