引用

tatsuamano2012-04-22

自分の論文が引用されるというのは嬉しいものです(画像は全く関係ありません…)。
もちろん自分の論文が出版されて世界に公表されるのも嬉しいものなのですが、それがさらに誰かに引用されるというのは、自分の研究が認知され、評価された、という実感を得ることができます。そのため、相手が有名な大御所であっても、知らない研究者であっても、自分の論文を引用してもらうのはやはり嬉しいものです。つながりが実感できるという点ではツイッターフェイスブックの感覚にも近いのかもしれません。
自分の研究が誰にどのくらい引用されているか、簡単にまとめることのできるサービスとして、トムソン・ロイターが提供しているResearcherIDがあります。同社のWeb of Scienceなどを利用して自分の論文を登録していくと、各論文の引用数や総引用数の年推移、h-indexなどの指標、引用者や共著者の国や所属機関、さらにはそのマップ化までしてくれます。自分もページを作成してホームページにリンクしていました。
これはこれで満足していたのですが、つい先日、共同研究者の署名にGoogle ScholarのMy Citationsというサービスへのリンクがあることに気付き、さっそく自分のページも作成してみました。
まず感じたのは、作成の容易さです。グーグルアカウントをもっていると、サインイン後すぐに候補の論文が表示され、正しいものを選んでリストを作成するのみで完成します。Web of Scienceなどの検索で自分の論文のみをうまく表示させるのは結構面倒なのですが、My Citationsでは自動且つかなりの高精度で候補論文をピックアップしてくれて驚きました。途中の説明によると、今後自動的にリストはアップデートされていくとのこと。まだ作ったばかりなので更新が今後どのようにされていくのかはまだわかりませんが、もし自動的に正確にされていくとすれば、とても便利です。ResearcherIDは気付いた時に自分で更新しなければなりませんので。もちろんMy Citationsでも自分で論文の追加・削除などすることは可能です。
My CitationsはGoogle Scholarをベースにしていますので、Web of ScienceなどをベースとしたResearcherIDとの根本的な違いもあります。
まず、同じ論文でも引用数が両サービスでかなり異なり、結果として総引用数やh-indexなども大きく異なります。もちろん論文によってその差は違いますが、概ねGoogle Scholarの方が1.5~2倍の引用数になっているようです。これはResearcherIDが基本的にはWeb of Scienceに含まれている雑誌に載った論文のみを対象にしているためです。一方で、Google Scholarではインパクトファクターのついていない雑誌やレポート、書籍、博士論文など、より幅広いweb上の出版物からの引用が全て含まれます。特に日本人の場合はここに日本語の論文が含まれますので、両者の違いはさらに大きくなるでしょう。他の言語も同様にカバーされているようですから、その点では研究の評価における言語格差の解消には役立っていると思います。
もちろん利用に契約が必要なWeb of Scienceに対して、Google Scholarは無料、と言う点も多くの人にとって重要な点でしょう。My Citationsでは登録研究者の多くが顔写真を掲載しているので、とても無機的に見えるResearcherIDよりもとっつきやすく感じるのも利点かもしれません。
また、個人的に気に入ったのは、同分野の他研究者とのリンクです。自分の研究分野をConservation BiologyやEcologyなどと記入するとリンクが発生し、そこから同じキーワードを入力している研究者の一覧を見ることができるのです。さらにその一覧は総引用数順で並んでいます。例えばEcologyのリンクを見てみると、トップにはJA Eisen、その後にCharnovやPiankaなどまだご存命なんだ…(失礼!)と思ってしまうような大御所、Thomas, Guisan, Araujoといった論文が目に浮かんでくる面々、また去年日本にも来ていたPossinghamも、まだ若いと思うのですがとてつもない引用数を誇っています。
そしてそのページのNextをNext, Next, Next, Next, ….とずーーっと押していくと自分が出てくるわけです。もちろん研究者の価値や意義は総引用数だけで決まるわけではないのですが、ひとつの指標で世界中の研究者と自分を比較できるという貴重な場であることは間違いなく、さらなるモチベーションの向上につながりました。
ざっと見たところ、まだあまり日本の生態学者のページはないように感じました。もし興味をもたれた方は作成してみてはいかがでしょうか。