共著論文

共著論文が二つ発表となりました。

  • Williamson, L., Hudson, M., O'Connell, M., Davidson, N., Young, R., Amano, T. and Székely, T. (2013) Areas of high diversity for the world's inland-breeding waterbirds. Biodiversity and Conservation 22: 1501-1512.

海鳥以外の水鳥を対象としたホットスポットを世界規模で抽出した研究です。
「今度インターン生が来るのだけれど、何かいいテーマはないだろうか?」と、共同研究をしているタマスに声をかけられたのが、1年半ほど前のことでした。その後何度か意見交換をして、気付いたらそのインターン生こと筆頭著者のローラが書き上げていたのがこの論文です。「書き上げた」と言うと聞こえはいいのですが、正直言って最初の原稿の出来は…というものでした。その後何度校正を重ねてもなかなか良くならず、そのままなし崩し的に投稿、編集者からも「出来は本当にひどいけど、内容が重要だからリジェクトできない」と明言され、改訂を重ねて何とか出版に至りました。
こうして出版できた内容は大変重要なものだと思います。水鳥のホットスポットというのは知る限りこれまで提示されてこなかったのですが、今回の評価によって種数は東アフリカで特に多いこと、そして絶滅危惧種数は日本を含めた東アジアで多いことが明らかになりました。日本は世界的に見ても水鳥のホットスポットと言えます。
一方で、ほぼ研究経験のないインターン生が世界規模のデータベースを使って、考察が不十分であろうが短期間で論文出版まで完成させてしまうという、最も極端な欧米型研究を経験したような気もしています。「つべこべ言っているくらいなら手を動かして何かを生み出せ」という思想には共感できる一方、不十分なところが目立ってもよしとしてしまう指導教官や共同研究者の非常に割り切った関わり方にも改めて触れて、いろいろと考えさせられました。

  • Katayama, N., Goto, T., Narushima, F., Amano, T., Kobori, H. and Miyashita, T. (2013) Indirect positive effects of agricultural modernization on the abundance of Japanese tree frog tadpoles in rice fields through the release from predators. Aquatic Ecology 47: 225-234.

こちらは農環研・片山君のドクター時代の研究です。アマガエルのオタマジャクシはドジョウからの捕食(または競争)によって負の影響を受けていること、それによって圃場整備→ドジョウ減少→オタマジャクシ増加、という間接効果が働いている可能性を、飼育実験と野外調査のパターンで示しています。
農業の集約化が生物に及ぼす影響は数多く発表されていますが、間接効果を介して正の影響を与えるというのはそれほど報告されていないのでは…と思います。それをそもそも研究事例の少ない水田生態系で示せたのがこの研究の大きな意義ではないかなと思っています。農環研の研究については生態学会でも様々な方から聞く機会があり、今後が楽しみです。

最後に少し時間が空いてしまいましたが、生態学会関東地区会会報・第61号に掲載された特集「生態学者の研究留学」に、「保全生物学者として英国で思うこと」と題した文章を載せていただきました。私の他にも計6名の研究留学経験者、現役生による文章が寄せられています。どの方の文章も、激しく同意できる箇所あり、そんなこともあるんだと新たに学ぶ箇所あり、とても興味深く読ませていただきました。特に、今も世界中でがんばっている日本の生態学者が数多くいると思えることは、私自身にとっても大きな刺激と励みになっています。まだご覧になっていない方は是非ご一読ください。