オーフス

デンマークコペンハーゲンに次ぐ第二の規模の都市、オーフスに行ってきました。街のほぼ中心に位置するオーフス大学では、生態学の分野では今回のホスト役となったエンス−クリスチアン・スベニング氏らを中心として、生物地理学やマクロ生態学が盛んです。今回は現在取り組んでいる言語の多様性・絶滅リスクに関わるプロジェクトのミーティングと、ビルが基調講演に招待された言語学のシンポジウム出席のために訪れました。
LEGOの本拠地、ビルン空港に降り立つと、いきなりの雪。暖冬の今年にしては珍しいとのことでしたが、やはり北欧に来たなという感じがします。

オーフス大は広大なキャンパスに点在する黄色の建物群が印象的です。内部は北欧の国デンマークらしく、こぎれいな感じでした。着いたその足で食堂に向かい軽食を取った後、早速ミーティングの開始です。

こちらのミーティングで特徴的なのは、ブレインストーミングの時間でしょうか。各メンバーが予備解析の結果や今後の予定を簡単に発表する以外にも、7人全員でテーブルを囲んでアイディアを出し合うという時間が重要視されます。実現可能性や事の大小はひとまず置いて、それぞれが思いついたアイディアやそれに関連する情報を次々と発言し、ホワイトボードに書き出していきます。年齢や立場によらず人間関係が比較的フラットである点も、このような場面ではプラスに働くように思います。半日ほどで、今後できそうな課題、それぞれの担当者やタイムフレームが大まかに決められ、その日の会議を終えました。
夕食はデンマーク料理の店で、カラッと揚げた豚バラとイモ、ビートルートなど。可もなく不可もないという感じ…。あまり特別な名物料理というものはないようで、「デーニッシュとはノーマルという意味。」と自虐的な話も出ていました。
翌日には少し観光も。美術館は屋上に設置されたレインボー回廊(?)が特徴的。

内部を歩くと予想以上に楽しい。

その後大学に向かい、初日にあがった課題についてもう少し踏み込んだ議論を行いました。どの共同研究者も多忙な中、数日という単位で時間を使って一つのプロジェクトについて議論できたのは大変貴重な機会でした。メンバーとの距離感を一層縮めることができたのも収穫だったと思います。
翌日は、"Time and space in linguistics: interdisciplinary computational approaches & cross-creole comparisons" と題したシンポジウムに出席。私にとっては言語学者と出会うのは初めての経験です。以前ビルが言語学者の前で発表を行った際には怒号が飛び交ったとのことで、まずはビルの基調講演を恐る恐る聞き始めましたが…、結果から言えば罵詈雑言などはありませんでした(笑)。ただ、言語の分布や絶滅リスクを考える際に、どうしても環境要因による影響に注目したくなる我々生態学者に対して、言語学者は言語(民族)間での相互作用を非常に重視しており、そんなモノの見方の違いは新鮮でした。
その後は気鋭の言語学者たちによる発表が続きました。多くの発表では、言語の起源や進化について考察するために、系統学及び系統地理学の手法が用いられていました。言語学では、これまで欠けていた定量的アプローチが生態学など他の分野から急激に持ち込まれているそうで、そんな自分たちの研究分野を憂えて、また将来を見据える若手言語学者たちが印象的でした。

その後もお茶の時間や懇親会を通じて、多くの言語学者と交流できたのはとても新鮮な経験でした。こうやって全く異なる研究分野を垣間見ることができると、新たな知に触れるということ自体が喜びであり興奮につながるんだ、という学問の本質を感じられるような気がします。こちらのグラントでは、学会やシンポジウムでの懇親会費はもちろんのこと、インフォーマルな会食費などもカバーされるのが通常であるようです。研究を推進する上で人とのコミュニケーションを特に重要視していることが、そんなところにも表れているような気がします。
最終日にはもう少し街を散策。改装中の植物園を見学させてもらったり、

デンマークでの一般的(と思われる)な食事を楽しんだり。

ひとりになったのをいいことに、ここ10年で急激に店が増えたという人気の寿司も試食。うまい。が、高い!

セブンイレブンがあるのにも驚きましたが、ヤキトリが売られており普通にうまいのも驚き。

雪に見舞われた初日の後も連日小雨が続いていたため、イギリスに戻るとこの国ですらまるで明るく暖かい国であるかのように感じました。今度はまるで雰囲気が変わるという夏にも訪れてみたいものです。