夏全盛

ワールドカップ、なかなか本来の持ち味を出せずにいますね…。渡英してから特に海外組の選手達には一方的に共感をもって過ごしてきましたので、彼らの気持ちを考えるとなかなか応えるものがありました。コロンビア戦、必ず悔いの残らないような試合をしてくれると信じたいと思います。
このところこちらはいよいよ短い夏全盛、という感じです。どのくらい全盛かというと、スーパーの一角がコーラで埋め尽くされてしまうくらい全盛です。

日本でも話題になった(?)名前入りコーラもありましたが、さすがに自分の名前は…

自宅には小さな庭があるのですが、庭師を雇って整えさせている英国風ガーデンとは似ても似つかない粗放的管理のため、春から夏にかけて、自生の種から以前の住人が育てていた栽培種も含めて、ものすごい勢いで様々な植物が勝手に育って花を咲かせます。そしてその花を目当てにやってくるマルハナバチの楽園のようになります。
Tree bumblebee
Red-tailed bumblebee
Early bumblebee
Southern cuckoo bumblebee(と思う…)
彼らのおかげもあって、今年は庭で育てたイチゴが豊作でした。

話は変わりますが、ここ2カ月程はいくつか貴重な新しい経験をすることができました。
まず、去年から担当をしていた学部生のプロジェクトが無事終わりました。最終的には計6人と、様々なテーマのプロジェクトを2学期にまたがって行いました。趣旨説明からデータ収集、Rの使い方や統計解析の指導、結果の議論、レポート執筆の指導、という一連のプロセスを経験したことは、大変ではありましたが、学生の成長だけでなく自分にとっての糧にもなったと思います。プロジェクト終了後には、成果の発表会や提出されたレポートの評価にも携わる経験をすることができました。学部生が最終試験とその後のパーティー三昧の日々を終えた今、このうちいくつかの内容を投稿論文化したいと思っています。こちらもまた公表となりましたらお知らせします。

今回担当した学部生達は本当に6者6様でしたが、やはりケンブリッジの学生ということもあってか、作業量やその効率、理解の速さや応用力、文章力など、全てではありませんが、どこかでキラリと光る能力を持っている学生が多いという印象を受けました。ケンブリッジの学部生はかなり高い割合でイギリス人なのですが、その教育の一端を世界中から集まってきたポスドク(場合によって大学院生も)が担っているというのは、イギリスにとって非常に効果的なシステムだと感じました。つまり、大学の研究環境が優れていることで世界中の研究者が自然と集まってきて、その能力が自国の学生教育に還元されるということになります。英語の存在、学問の歴史の長さ、ヨーロッパという地理的位置など、イギリスという国がもつ複数のアドバンテージの効果を実感させられたような気分です。

一方、もう一か月以上前のことになってしまいますが、初めての講義を行いました。急用ができたビルの代役で、Human Biologyという複数の教官が持ち回りで行うシリーズの一回分です。ここ二年程自分でも取り組んできた言語の多様性や絶滅リスク、また生物多様性との比較について、50分間話をしました。研究を始めた頃からいつかは講義をすることもあるだろうと思っていたのですが、まさか初めての講義が言語についてとは思ってもみませんでしたね…。人生分からないものです。自分の話を聞いて学生がメモを取ったりしているのを檀上から見るというのはまだ不思議な感覚ですね。特に今後他の講義をする予定は今のところありませんが、機会があれば是非経験をさらに積んでいきたいと思います。

最後に、今年初めに発表した植物フェノロジーと分布域変化の関係についての研究が、データの提供元であるWoodland Trustからプレスリリースされました。論文の公表は2月で、それに間に合うようプレスリリースの原稿も準備したのですが、よくわからない理由で延ばし延ばしとなり、結局4か月経ってのリリースということになってしまいました。いくつか新聞でも取り上げてもらったのですが、当日大学のメディアチームから電話があって、BBCラジオが是非話をしてほしいと連絡してきたと伝えられました。Cambridgeshireで流れるローカル番組ですが、電話での取材ですら大変そうだなと思っていたところにラジオです。かなり気が引けたのですが、せっかくの貴重な機会ということで、スタジオまで行って出演することにしました。

ケンブリッジ市内にあるBBCに到着すると、いかにもメディア関係者といった感じのプロデューサーがスタジオまで招き入れてくれます。イメージしていた感じのガラス張りのスタジオの中では、既にDJが番組を進行しており、PK戦でいつも負けるイングランド代表の精神的弱さについて会話が行われていました。プロデューサーは特にやることもないといった感じで、世間話をしながらリラックスしようとしてくれます。時間が迫り、数分ほど前にそろそろ…とスタジオの中へ。録音(?)の内容が流れている間にやはりDJが他愛もない話でリラックスさせてくれ、いよいよ合図とともに生放送に戻りました。DJがいかにもそれらしい口調で「イギリスの植物が…」と始めた時にはさすがに緊張のピークでしたが、その後5分ほど続いた会話では、基本的に事前に教えてくれていた内容をそのまま質問してくれたので、本当に助かりました…。会話を何とか終えると、その足でプロデューサーに促されて退席。終わってみるとあっという間でした。ビルや同僚も聞いてくれたようで後から感想を伝えてくれたり、自分でも聞いてみて改めて恥ずかしいような思いをしたりしましたが、またひとついい経験になったと思います。
さて今年の夏はいよいよ日本で国際鳥学会が開催されますね。あと2か月ほどとなりましたが、それまでにこちらでの仕事ももう一頑張りして、気持ちよく一時帰国を迎えたいと思います。